習慣化で高める思考力。伴走支援でマーケティング課題を解決する
株式会社mazuWAでは、マーケティングの思考を人材・組織開発に応用し、生産性向上を図る研修サービスを提供しています。このサービスの普及に取り組むなか、初めての導入事例となった企業が六甲バター株式会社様です。
六甲バター様は75年を超える歴史があり、これまで多くのヒット商品を世に送り出してきました。しかし、マーケティング領域に課題があり、人材育成のノウハウもなかったことから、mazuWAの研修サービスを導入することになりました。
今回は、六甲バター様のマーケティング本部長兼執行役員を務める黒田様とmazuWA代表取締役の山口に、研修サービスにかける想いや導入後の変化、今後の展望などを聞きました。
六甲バター株式会社様
1948年に創業し、兵庫県神戸市に本社を構える大手企業。「Q・B・B」ブランドを掲げ、乳製品の製造・販売を行っている。売上の9割以上をチーズが占めており、家庭用プロセスチーズは国内トップシェアを誇る。なかでも、ベビーチーズの国内シェアはNo.1。創業から75年以上経った今もなお、日本のチーズ市場を牽引し続けている。
思考を習慣化し、強化する12カ月。独自のプログラムで“考える楽しみ”を提供する
-mazuWAが提供しているサービスについて教えてください。
山口 mazuWAは、企業向け研修サービス「Wow Camp」を提供しています。個人が日常の気付きを起点に、言語化する力や本質をつかむ力を養い、業務に活かせるように伴走支援することで、新規事業の創出や離職、部門間連携といった経営課題を解決する、日本で唯一のサポートプログラムです。期間は12カ月、1グループ6〜8名のメンバーで進めるケースが多いです。
Wow Campの特徴は、主に三つあります。一つ目は、習慣化を重視していることです。月に1回の定期講義に加え、受講者には宿題を出しています。日常のなかでの気付きをピックアップ・深掘りして、シートにまとめてもらうんです。そうすることで、考えることの楽しさを知り、自然と習慣化できる仕組みになっています。
二つ目は、思考のトレーニングを体系化していることです。思考力や言語化能力を鍛えるトレーニングを体系的にとらえて、プログラムとして構築している点は、ほかの研修サービスにはない特徴だと考えています。
三つ目は、成果に直結する仕組みを実践していることです。研修によるインプットだけでは、あまり意味がありません。日常で得た気付きを深掘りし、そこから得た本質を自分の業務にする工程を必ず踏んでもらい、業務上での成果につなげることを意識しています。
そのほか、個人の能力開発だけでなく、チームエンゲージメントの向上を同時に実現できる点も強みの一つです。グループワークの中で、参加メンバーの日常の気付きをシェアすることが自然に自己開示できる環境となり、対話の機会を創出することでチームビルディングへの貢献を目指します。特に若い世代は胸の内を言語化しない傾向にあるので、研修を通じて彼ら彼女らの秘められた柔軟な考えを引き出すことができるのは、組織にとって意味のあることだと考えています。
不足していたマーケティング人材の育成ノウハウ。外部の力による変革に期待
-六甲バター様にはどのような課題がありましたか?
黒田 六甲バターは戦後間もなく創業した会社で、75年以上の歴史があります。しかし、マーケティングの領域に力を入れ始めたのは、長い歴史からすると最近のことです。マーケティング部の社員も、もともとは営業や商品開発の部門に在籍していたため、マーケティングに長けているわけではありません。そのなかで、自社にマーケティング人材の育成ノウハウがないことが大きな課題でした。
プライベートブランドが増えてきている状況で、ナショナルブランドとしての生存戦略を考えたとき、マーケティング力の強化は不可欠です。しかし、実はメーカーにとって消費者は一番遠いところにいます。問屋があり、スーパーがあり、その先に消費者がいる。消費者の支持を受けるためには、消費者を理解したうえで高い商品価値を生み出す企画力や創造力が求められます。
さらに、社内での連携・情報共有も重要な要素です。営業担当者が流通業者に商品価値を伝えるため、マーケティングに基づく思考をどう言語化し、ほかの部門の社員に伝えていくかという部分についても、解決する手段がほしいと考えていました。
-そしてmazuWAの存在を知ったのですね。
黒田 はい。なんとか外部の力を借りて、優秀な人材を育てていきたいと考えていたところ、知人からmazuWAの山口さんを紹介されました。直接会って話を聞くうちに、多彩な経歴を持ち、熱意と情熱のある山口さんになら任せられると思い、「試しに1回研修をやってみよう」という話になったんです。少人数でのトライアルから始まり、現在はマーケティング部の若手を中心に10名程度の社員が参加しています。
山口 トライアルの話をいただいた時、黒田さんは「まずはやってみて、一緒に改善していけたらいいですね」とおっしゃってくれました。その言葉を受けたことで、研修内容がハマるのかコケるのかという心配より、「手を取り合いながら船を漕いでいきたい」という想いの方が強くなりました。協力し合える関係性のもとで研修をスタートし、今も続けられているのは本当にありがたいなと思います。
黒田 研修を導入するにあたって、すぐに効果が出るものではないと思っていました。私は山口さんを信頼していましたが、社内からは即効性を求める声が上がるのではないかと懸念していたのも事実です。
しかし、私たちが抱える課題を社内で解決することは難しいと分かっていたので、最終的には餅は餅屋に任せようと判断しました。うまくいかないことがあっても、ブラッシュアップしながら成果につなげていけたらいいなと。山口さんには、それに対応できるだけの柔軟性があることも知っていましたから。
楽しみながら取り組む社員の姿。考えることが習慣化し、物事を見る目が変わってきた
-mazuWAの研修を受けるなかで、社員の方々にどのような変化がありましたか?
黒田 研修は今年に入って5回実施しており、私も参加して社員の様子を見ていますが、何よりも楽しそうに取り組んでいるなというのが率直な感想です。もちろん業務の一環として取り組んでいることですが、一人ひとりが意欲的に課題と向き合っています。
なかには、「休日の買い物中も、心が動くものやおもしろいものがないかと意識をするようになった」と話す社員がいるほどです。習慣化につなげるためには重要なことですね。
思考のトレーニングは、自転車の練習とよく似ています。ステップを踏んでいけば、いつの間にか乗れるようになって、数十年経っても乗り方を忘れることはない。身体が覚えて、無意識にできるようになるまでには、トレーニングを積み重ねることが大切です。今の社員も、補助輪の片方くらいは外せるようになったかなと思います。
-研修サービスのどの点に価値を感じていますか?
黒田 山口さんが講師だからこそ、社員は能動的に取り組めています。研修に参加している社員は、多くが20代・30代です。山口さんは「年齢が近いお兄さん」のような存在であり、自分たちと近い仕事をされてきた先輩でもある。そして、利害関係のない外部の人だからこそ、刺激を受けやすいのだと思います。
山口 私もメンバーとの距離感は常に意識しています。あくまでも主役は皆さんで、私は寄り添う立場です。できる限り同じ目線で、一緒に悩んだり共感したりしながら研修を進めています。
ただ実際は、皆さんの素晴らしい思考力に、私も勉強させてもらっています。優秀な人たちの頭の中にある思考のプロセスを共有することで、自然とアンテナが増えて、考え方も多様化していきます。私は、その過程を仲介する役割を担っているだけに過ぎません。
-黒田さんも研修に参加されているとのことですが、どのような印象を持たれていますか?
黒田 研修に参加していると、思考は人それぞれ異なることがよく分かります。だからこそ、日常の気付きを共有し合うことに大きな意味があります。
また、研修でやっていることは、インプットではなく、思考のアウトプット。PDCAを回して次のステップに結びつけるためのトレーニングなんです。研修が始まって5カ月程度ですが、トレーニングを繰り返すことで、少しずつ成果が出てきていると実感しています。
山口 私が想像している以上の効果が出ていて、うれしいですね。思考力を高めるには、まさにインプットではなく、アウトプットが重要です。現段階で定量的な効果を測るのは難しいですが、すぐに結果が出る人事研修は存在しません。中長期的に継続してトレーニングを積んでこそ、成果につながるものと確信しています。
部署を問わず活躍できるマーケティング人材の育成を目指す
-今後、mazuWAの研修サービスに期待していることを教えてください。
黒田 私たちは、消費者のリサーチや商品開発、販売戦略の策定などを経て、価値ある商品を生み出していかなければなりません。そして、その過程においては想像力や言語化能力が必ず求められるため、今回の研修成果がきっと活かされるはずです。結果としていいものができて、お客様に支持され、会社の売上・利益につながっていけばいいなと考えています。
研修に参加している社員は、これからどんどん成長していくでしょう。組織なので同じ部署にとどまるわけにはいきませんが、どこに配属されても研修で培った能力が十分に活かせて、周りから「あ、この人は一味違うな」と思ってもらえる人材に育ってくれればうれしいです。
-これから研修サービスをどのようにしていきたいですか?
山口 研修を受けたメンバーに対しては、一人ひとりが幸せになってほしいと心から願っています。考えることを楽しいと感じて、持続可能なものにすれば、仕事だけでなく人生が豊かになると信じています。
研修サービスのカリキュラムは、今後もアップデートし続けるつもりです。サービスの内容には自信を持っていますが、生まれたばかりのサービスなので、利用者の声を受け止めながら改善を加えていきます。もちろん、根幹にある考え方は変えません。ただ、枝葉の部分は柔軟に変化させながら、 企業様ごとに個別化していく必要があると考えています。
その先の展望として見据えているのは、コミュニティーを作ることです。部署間の交流はもちろんですが、Wow Campを通じて会社同士がつながるのもおもしろいなと考えています。考え方をシェアして、互いに刺激を受け合うことで、より強い組織を、ひいてはより強い日本を作っていきたいです。
クレジット
インタビュー・執筆:稲井亮介/編集:堤真友子 撮影:渡辺宏